関口恒男氏 of 波止場通信


■アーティスト 関口恒男氏

虹が映し出される小屋は
思わず踊りたくなる未来空間だった!

ハット内部.JPGレンボーハットの内部は、こんな感じ

■粗末な小屋は、感動的に居心地がいい!

 今回の神戸ビエンナーレ2011で、私が気に入った作品の一つが、関口恒男さん(55歳)の「レインボーハット」だ。
 どんな作品かといえば、写真を見るのが一番分かりやすいが、外観だけをみると、2つの岩山のように見える。だが、これは不織布を貼り合わせた小屋。ハットは粗末な小屋の意味である。
 小屋の中に入ると、小屋を支える木々や葉っぱ、ハンモックなどが目に付く。不織布の継ぎ目や薄い部分は少し明るくなっており、まるで木漏れ日のように見える。アフリカの大地で暮らす人々の小屋のようだ。
 さらに小屋の上と海側の側面に穴が開いており、そこから光が差し込んでくる。太陽が傾きだす午後3時以降は横の穴から、それまでは上の穴から。小屋の隅には移動式の大きな鉢がおかれ、中には多くの鏡が水に浸かっている。これを移動させて、穴から差し込んでくる光を鏡に反射させると、不織布や木々などに見事に虹が現れるという仕掛けだ。レインボーハットと名付けた所以である。
 さらに上から何やらヘッドホンがぶら下がっている。耳に当てると、踊り出したくなるような低いリズムが聞こえてくる。

 作品を見て感じるのは、人間の根元的な部分での生命力へのオマージュであり、人間への愛であり、人間も含めた自然や宇宙に対する共感である。そして誰しもここに住みたくなるような癒しの魅力に溢れている。
 この作品が、ポーアイしおさい公園でのしつらいアート国際展で大賞を受賞したと知り、私も嬉しくなった。

ハット全景.JPGレンボーハットの全景ヘッドホン.JPGヘッドフォンで音を楽しむ子供たち

■ビエンナーレ期間中、毎日現場へ!

 実は、作品とともに関心を抱いたのは、制作者の関口さん自身についてである。何と彼はビエンナーレ期間中、車で寝泊まりしながら作品に付き添っている。神戸ビエンナーレも今回で3回目だが、こんな例は今までになかったと思う。開催期間は10月1日〜11月23日までと、約2ヵ月近い長丁場である。他の仕事をせずに作品に付きそい続けるのだ。

 「私の作品は、作って完成ではありません。太陽の傾きに合わせて鏡の角度を変えないといけないし、小屋の修復もあるので張り付いています。車中泊ですか? 大変なことではありませんよ。楽しんでいます」とさらりと話す関口さん。彼の感覚は、快適さに慣れ過ぎた現代日本人の感覚とは明らかに違う。
 自身の作品について「未来の農耕社会のイメージなんです。こういったものに美しさを感じますね」と語る。コンピュータもハイテクも発達しているが、ローテクも発達している。コミュニティの中にこんな場所があり、農作業の合間には集まってきて、踊ったり、食べたりする。サスティナブルな生活が普通になった世界は、こんなイメージではないかと。


鏡1.JPG水に浸した鏡鏡2.JPG鏡を入れた鉢を移動させる鏡3.JPG太陽の光を鏡に当てる

■インドで出会ったダンス体験

 彼の発言の中で、キーワードとなるが「踊り(ダンス)」だ。「自分で踊りたくなるような空間」こそが、このレインボーハットなのだ。
 関口さんとダンスとの出会いは、20年以上前に遡る。当時、アートの世界で試行錯誤を繰り返し、壁にぶちあたっていた。31歳の時、インドのゴアに旅に出かける。長期滞在用の安宿に泊まっていると、毎夜遠くからドンドンとディスコのような音が響いてくる。ある夜、確かめにいくと、ジャングルの中でピッピーたちが、コンピュータで作られた連続音に合わせて踊っていた。これまでの次元とは違う音だった。世界中でダンスムーブメントが起こる前のことだ。数日後、彼らと一緒に踊ることに没頭していた。ダンスは人間の精神を開放する。「僕がやりりたいのは、こういう生活だと思った」。以後7年間、毎年、ゴアに出かけ踊っていた。美術の世界をまったく忘れていた。

 インドのゴアでダンスをする場所に虹を加えた。レインボーハットの誕生だ。虹は人間が恩恵を受けている太陽の表現の一つだ。誰もが素直にキレイだと思う。「ダンスにしても、虹にしても、何の先入観もない素直で新鮮な目と心で素晴らしいと感じることができる。その行為が美しい」と関口さんは言う。
 関口さんにとって作品制作は、生きることに直結している。素直に美しい!愉しいと感じられるような場を作りたいと考えている。彼にとってレインボーハットは、制作現場であり、生活の一部なのだ。

虹が出た.JPG虹が壁面に出ました関口さん新.JPG関口恒男さん


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