寿ロータリーの秘密 of ダラーガ通信

寿ロータリーの秘密

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近所のロータリーは、実はとんでもないものだった

 「ロータリー交差点」をウィキペディアで調べていたときだ。画面の中に「寿ロータリー(豊岡市)」が写真入りで紹介されていた。
 このロータリーは私の実家のすぐ近くである。徒歩5分ほどの距離だ。生まれてこの方、このロータリーにとくに特別な感慨らしきものを抱いたことはない。中央に豊岡市最大の功労者・中江種造氏の銅像があるだけで、あとはロータリーの周りを歩くのは遠回りになるので、ちょっと嫌だなと思うくらいだ。
 しかし私は発見してしまったのだ。この寿ロータリーの秘密を‥。そしてこのロータリーがいかに重要な意味を持っているかを。

いまロータリー交差点が見直されている!

 なぜロータリー交差点を調べようと思ったのか。経緯を簡単に説明しておきたい。毎日新聞に「ロータリー再び光」と題した記事がでていた。交通点の事故防止やエコの観点から、いま改めてロータリー交差点が見直されているらしい。
 もう少し内容を紹介すると、戦後、GHQ(連合軍総司令部)の指示で各地にロータリーが設置された。
 国際交通安全学会によると、①すべての車が時計回りに進むため混乱がない②車の速度が抑えられ大事故が起きにくい③信号がないので車の待ち時間や燃料のロスが少ない─などの特徴があるようだ。ロータリー交差点には、この他にも、Uターンが容易にできることもメリットだ。
 長所だけでなく、短所もある。交通量の多い交差点では採用しづらい。必要面積が広く、用地確保が難しい。交叉点に馴れていないと、どの方向に向かっているか把握しづらい。といったものだ。
 乗用車の普及などで、大半が信号機付きの十字交差点に置き換えられ、学会によると、現在、全国に残るのは約120カ所ほどだという。その120カ所の一つが、寿ロータリーなのだ。

大正年代に大豊岡構想のもとで、市街地計画を策定

 さて、肝心の寿ロータリーである。このロータリー、実はGHQの指示で戦後に作られたものではなく、ロータリーを含めた豊岡市の現在の市街地計画は、すべて大正年代に作られている。
 豊岡は、明治42年に豊岡駅が建設され、第1次世界大戦にともなう好景気によって町は活気をおび、人口流入が激しくなった。そして大正7年に当時の由利町長と伊地智助役は、大豊岡建設の夢を抱き、いまの大開通り以北の低湿地の水田地帯を市街地に組み込むために、豊岡の市街地の設定にのり出したのだ。その計画が、下右の地図である。

北但大震災が、計画実現を早める

 この計画の実現を早めたのが、大正14年5月23日に起きた北但馬大地震(北但大震災とも呼ばれている。マグニチュード7と推定)である。この地震によって豊岡は壊滅的な被害を受けた(城崎や港の被害はさらに甚大であった)。この豊岡を復興させるためには、交通網の整備を最優先にすべきとの考えから、兵庫県から巨額の金を引き出し、道路の拡張整備を含めた市街地計画が急速に進んだ。とはいうものの、市街地計画は大正8年から昭和7年まで14年簡にわたって行われた。
 こうして豊岡駅から円山川沿いの県道まで一直線でいける斜めの道路(橋爪紳也氏が称したブロードウエイ・ライン)と、全国でもいち早くユニークな寿公園ロータリーも誕生したのだった。

モデルは、なんと、パリのエトワール広場!

e0168302_2155483.jpg凱旋門が美しいエトワール広場調べれば、さらに驚くべきことがある。この寿ロータリーは、なんと、パリのエトワール広場をモデルにして建設されていた。あの凱旋門のあるところだ。このエトワール広場から12本の通りが放射線状に星(エトワール)のようにのびている。ナポレオン三世によるパリ大改造計画の中心的な場所でもある。そのエトワール広場を模して、この寿ロータリーが作られていたとは‥。こちらは6叉路だから、エトワール広場の半分だ。
 規模も華やかさも違いすぎるので、にわかには信じられないが、事実である。

先進の気概を、未来につなげてほしい

 豊岡には、エトワール広場やニューヨークのブロードウェイのような華やかさはない。あまりに地味だ。だが大正時代に、先進的な都市づくりをめざした、その志を知ることができただけでも、嬉しいではないか。
 できれば今後、若い人たちの力で、寿ロータリーの周辺、およびブロードウエイ・ラインに当たる通りがもっと素晴らしくデザインされ、活気ある町空間として生まれ変わることを祈るばかりである。


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左が耕地整理前の整理地区。条里の残存がよくわかる。そして右が耕地整理後の整理地区。左右の地図を比べてみると、条里遺構を比較的忠実に残して整理されたことがよくわかる。中央部の寿公園ロータリーを含む斜線路は、やはりユニークだ