散歩6 of ダラーガ通信

宇治川ヘリテージツアー

ダムの巨大さよりも、ダムマニアの情熱に驚く!

■旧志津川発電所の風情は絶品!

 NPO法人J-heritage理事長の前畑さんから案内をいただき、普段は見ることができない発電所内部まで見学でき、現場スタッフの話も聞けるというので参加した。こんな機会でもなければ、二度と見ることはないだろう。
 8月8日。昔なら、8.8Rockdayの日だ。この日の京都地方は最高気温36度。とにかく蒸し暑い。

 JR宇治駅集合。参加者は17名。前畑さん自身が「平日なのに、これほど多くの人に集まっていただけるとは」と嬉しい悲鳴を上げる。一行は天ヶ瀬ダムに向かって約1時間歩き続ける。前方に天ヶ瀬ダムの姿が見える頃、川の対岸に、蔦で覆われたレンガ造りの建物が現れる。いまは使用していない旧志津川発電所だ。大正13年に、当時、日本で5大電力会社の一つに数えられていた宇治川電気(現在の関西電力の前身)が建てたものだ。昭和39年に閉鎖されてからは、関電の子会社が水理実験所として利用しているらしい。「これを撮りたくて参加しました」という男性が熱心に写真を撮る。確かに風情がある。

■天ヶ瀬ダムと発電所をしっかり見学

 天ヶ瀬ダムに着き、まずは所長さんから簡単な説明を受け、最近、ダムの一番上にあるクレストゲートから放流したDVD映像が流れると、一斉に「おお〜!」という声が上がる。マニアには生唾ものなのだろう。後で調べると、完成直後にテストで放流する以外は、大洪水が起きそうな時しか放流しないので、やはり歓声をあげる価値のある貴重な映像だったことを知る。
 さっそくヘルメットを被って、天ヶ瀬ダムの上(堤頂)を歩く。初めて体験である。見晴らしがよくて気分がいい。川上の満々と湛えた水は眠るように静かで、川下側には、放流した水をうける減勢池、そして宇治川と周辺の山々に挟まれた天ヶ瀬発電所、旧志津川発電所などがよく見える(昭和の広重・吉田初三郎なら、宇治の市街地や、遠く富士山まできっと描くだろう)。

 近くの天ヶ瀬森林公園で昼食。しばし歓談。午後は、天ヶ瀬発電所に伺い、会議室で天ヶ瀬ダムや発電所の特徴などを伺う。このダムがドーム型アーチ式であること、また水力発電には、ダム式、ダム水路式、水路式、揚水式などがあることなどを知る。その場限りの付焼刃的な知識だから、いつまで覚えているか我ながら疑問だが‥。
 その後、発電所内部の設備を見せてもらうが、ここは残念ながら撮影NG。再び外に出て、ダムの真下にある減勢池に移動し、70m以上の高さを誇るダムを見上げる。巨大な建造物には、人間誰しも畏怖と畏敬の念が湧くものらしい。

■廃墟探検と、レンガ造りの宇治発電所へ

 今度は、先ほどから気になっていた旧志津川発電所へ。といっても中には入れない。かつてここまで水を通していた3本の水圧鋼管の土台が鬱蒼とした林の中に残っている。それを辿るために足を踏み入れる。足元が悪く転倒しないように注意深く進む。ちょっとしたインディジョーンズごっこだ。なかなか楽しいものだ。鋼管が抜かれたあとの土台が円筒形で残っていたりする。
 次は、最終目的地である宇治発電所へ。ここは大正2年(1913年)に設立された発電所であり、現在も現役。だから98年間も頑張っていることになる。褐色のレンガ造りの建物だが、大正ロマンを感じさせるようなレトロ感覚と、現在も現役であり続ける誇りが感じられて素晴らしい。各自が写真撮影を済ませて、にこにこ満足の様子だ。
 今回のツアーでは、ダムの現場に行かないともらえない「ダムカード」(詳しくはコチラ)を100枚以上持っている人や、財団法人日本ダム協会が認定する「ダムマイスター」と呼ばれる人がおられるなど、ダムの巨大さよりも、ダムマニアの人たちの情熱と行動力に驚いたのだった。
 いやあ、それにしても疲れた。疲労と暑さで倒れる寸前の身体を、安政5年創業という甘味処「中村藤吉本店」に運び、宇治きん氷「抹茶黒蜜」をいただき、体力の回復を図った次第である。
                ※
 最後に、今回のツアーを実施するために大変な時間と労力をかけて準備された前畑さんに感謝したいと思います。尚、前畑さんには、本ホームページの「ぽれぽれ広場」にも近く登場して頂いています。ご期待ください。

旧志津川発電所.JPG蔦が壁面を覆う旧志津川発電所。いまは水理研究所として使用されている
放流シーン.JPG天ヶ瀬ダムのクレストゲートから放流している映像に、「おお〜」の歓声があがる天ケ瀬ダムの上.JPG天ヶ瀬ダムの上を歩く
鳳凰湖.JPG上流にあるダム湖は、鳳凰湖と名付けられている

下流をのぞむ.JPG下流の左手に天ヶ瀬発電所、右手に旧志津川発電所が見えるダムを見上げる.JPG天ケ瀬ダムを下から見上げると、その迫力を実感!
歩く.JPG旧志津川発電所に通っていた水圧鋼管の土台跡をたどって歩く不思議な円形.JPG水圧鋼管が撤去されたあとの円形が不思議な雰囲気に!

宇治発電所.JPG宇治発電所。明治41年に着工し、大正2年に発電開始。そしていまも現役!
宇治発電所の威容.JPG赤いレンガの風格を漂わす外観が見る人を惹きつけます


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